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光博士の最新ガン治療〜静岡大学大学院 創造科学技術研究科 欧陽東彦さん

静岡時代の自己資金・寄付金などにより実施された「静岡時代奨学基金」。平成29年度の給付研究生として選出されたのは、静岡大学大学院に在学中の欧陽東彦さんです。今回は、大学進学とともに中国から来日し、「人体に影響の少ないやさしい治療法を開発したい」と、日々ガン治療の研究に励む欧陽さんの姿を取材しました。

光を利用したガン治療研究

現在、日本では「2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死亡する」と言われています。2016年末、神戸大学と大阪府立大学が、ガン細胞がもつたんぱく質に結合して、ガンを攻撃する中分子医薬の開発を進めているという話題もあり、いまガン治療への関心が高まっています。静岡県にもまた、光を応用した療法でガン治療に役立てようと研究している学生がいます。

平川研究室に所属している欧陽東彦さんは大学進学を機に中国から来日し、光・ナノ物質を専門にガンの新たな治療法を研究。それは「ガンの光線力学的療法(PDT)」。可視光を使ってガン細胞だけを識別し、攻撃するというものです。

現在のガンの治療法は手術や放射線療法、化学療法などがありますが、それらは患者にとって負担がかなり大きいもの。侵襲性が低い上に、健康な細胞まで攻撃してしまうため、結果的に患者の生活の質(QOL)を落としかねないという問題を抱えています。

光線力学療法において重要なのが「PDT用光増感剤」。その名のとおり、光を受けると励起されて活発になる(酸化性が強くなる)というもの。従来、用いられている光増感剤(ポルフィリン)は活性酸素状態で生体分子を損傷するというものですが、ガン細胞内は低酸素状態。治療効果が制限されてしまうという課題があります。

医療現場の未来に、「光」をもたらす

欧陽さんが着目したのは、「光」。光エネルギーにより生じた化学反応に誘起される形で電子が移動する、その段階で生体分子からガン細胞のみを選択し攻撃するというものです。現在はガン細胞内でのみ機能するポルフィリン誘導体を開発するため、ポルフィリンの構造やメカニズムなど基礎研究を重ねています。

「これから日本はいっそう高齢社会の時代を生き抜いていかなくてはなりません。高齢により手術ができない人にとっても、人体に影響の少ないやさしい治療法を開発したい」と欧陽さん。もともと生物が好きだったという欧陽さんが、生物の基礎となる化学を学びたいと静岡県へやってきて5年。「研究の成果を出して、上に行きたい」。逸る気持ちをぐっと抑えながら、光増感剤の開発と薬効分析を着実に積み上げています。

この研究は、手術さえも困難な患者にも適用可能な治療法のため、期待のもてる研究です。さらに、たんぱく質とポルフィリン光増感剤の結合状態の解明は基礎化学の常識を変えうるもの。基礎研究だからこそ時間もお金も要しますが、その波及効果は計り知れない。そんな未来ある研究が静岡県から生まれようとしています。

自分の興味のある分野を学びたいという意欲が、人の命を救う研究へと繋がっている。欧陽さんのお話を伺って感じたことは、本当に好きなことをやっている人は挑戦してみたいという希望に溢れていて、そこにパワーが感じられること。人それぞれ得意不得意はあるけれど、自分の好きなこと興味のあることを突き詰めていけば、何かしら人の役に立てるのだと思います。自分の気持ちに正直に、生涯好奇心あふれる人でありたいですね(了)

◆静岡大学大学院 平川研究室
http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~tkhirak/
◆平成29年度静岡時代奨学基金「静岡時代部門」奨励賞 受賞
http://shizuokajidai.or.jp/shogaku/


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