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2016-11-01

世界初!免疫機能を高めるCCL25の研究チーム〜静岡大学大学院 茶山研究室

静岡時代の自己資金・寄付金などにより実施された「平成28年度静岡時代奨学基金」の第1号給付研究室として選出された、静岡大学大学院 総合科学技術研究科 農学専攻の茶山研究室。ヒトやマウスの母乳中に免疫機能を高めるCCL25(タンパク質の一種)が含まれることを世界に先駆けて発見した研究室です。今回は、企業との共同研究も視野に世界初の成果物を研究している姿を取材しました。大学生や高校生だけでなく、食品関連企業で働く人も一見する価値ありの研究室です。

【取材・文:森下華菜(静岡大学)】

まさに『シン・人工ミルク』。世界の子どもたちに、より母乳に近いミルクを

白衣、顕微鏡、大小様々な実験器具、まさに「理系の研究室」という本格的な雰囲気が目前にひろがる。今回取材した静岡大学大学院で農学を専攻する茶山研究室は、ヒトやマウスなどの母乳中にCCL25というケモカイン(タンパク質)が含まれることを世界で初めて発見した。茶山研はCCL25を加えた人工ミルクを作製し、CCL25を加えない場合とマウス新生仔の成長、免疫機能の作用がどう異なるかを検証。CCL25が免疫機能を高める可能性があること、母乳哺育の重要性を明らかにした。茶山研の彦坂英佑さんは「研究が進めば、CCL25を粉ミルクへ応用して発展途上国の新生児や未熟児の成長を母乳と同じように促進できると考えられる。感染症死亡率を低下させたり、アレルギー疾患や免疫疾患を防いだりすることも期待できる」と話す。彼らは、未だ誰も知らない答えに向かって研究している。

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研究室の動物室には200~300匹のマウスがいる。そのうち実験で人工ミルクを投与するのは生後2~10日のマウス。24時間当番制でずっとミルクを与え続け、その他にも掃除、餌、出産などを常に確認する必要がある。「人工哺育という実験は、母マウスの代わりになるということ」と強くその責任を自覚していた。

今後はCCL25の免疫機能向上の詳細な効果を示すとともに、母乳に含まれるCCL25以外の微量免疫情報伝達物質の生理学的機能を研究していくという茶山研。世界でもまだ例のない研究のため、ケモカイン抗原も機材も高価(抗原だけで約10万円)。それでも「やるべきことは山ほどある」と、企業との共同研究も視野に研究に従事している。「自分が本当に好きなものと興味が持てるものを見つけるのは、いつまでも遅くない」、そう語る目は静かな自信に溢れていた[了]

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静岡大学大学院 総合科学技術研究科 農学専攻 茶山研究室

ヒトやマウスの母乳中に免疫機能を高めるCCL25が含まれる事を世界に先駆けて発見。CCL25を用いた人工哺育実験によりCCL25の有用性を研究。平成28年度に静岡時代の奨学金を受給。


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