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2016-11-08

県議会研究【県の条例のつくりかた】

静岡大学人文社会科学部2年の寺島美夏です。これまで定例会を追ってきましたが、今回は県議会で議決し制定される『条例』について取り上げます。 大学生の私たちには正直あまり馴染みのない条例ですが、わからないからこそ詳しく知りたい。そこで今回は、条例がどのように作られているのかを起点に、静岡県議会事務局の野村さんにお話を伺いました。

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県議会研究 その1

【県の条例のつくりかた】

ーーそもそも条例とはどんなものを指すのですか?

条例とは、地方公共団体が国の法律に則った内容で、独自に定めることのできるルールのことです。憲法第94条でも規定されているんですよ。県の範囲でのお話をしていきますが、県なら県議会の議決をもとに制定する地方立法ということです。条例と言っても色々あって、実はそのほとんどは、県職員の定数や、県の公共施設の利用料、手数料を定める場合や公共施設の設置を行う場合など、地方自治法やその他の法律に沿ってつくられるのです。必ずしも条例の制定は必要ではないけれど、この政策を推進していきたいから定める「任意条例」というものがあります。その中でも、県議会議員が提出する任意条例のことは議員提案政策条例と呼びます。

ーー静岡県はもちろん、他県でも議員提案政策条例が続々と作られていますが、その背景は?

これまで、地方分権が進む中で、前三重県知事をはじめ改革派と呼ばれる知事が台頭してきました。県は、知事と県議会の二元代表制であり、知事と県議会の両輪が動いてこそ、という考えから、これまで監視・チェック機能がメインの議会も政策立案の面からプレゼンスを高めていくことが求められているのです。

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ーーでは県議会議員がつくる議員提案政策条例は、どんなプロセスを経て制定されるんですか?

条例制定の流れですが、まず準備段階で原案作成を行います。これはまだ議会で議論する準備ではなくて、まずはその条例を議案提出したい議員を中心に、その議員の所属会派内での調査・研究段階、ということです。議員の頭の中のアイデア段階から会派案としてまとめるまで、だいたい半年ほどかかります。私ども議会事務局政策調査課は、このような調査・研究の際に議員をサポートするという仕事があります。

そうして次にやっと、この会派原案を議会で検討することになります。その段取りも決まっていて、まず会派から「条例案検討委員会」(以下検討委員会)の設置を求める申し出が、議長に出されます。議会ではこの検討委員会が中心に議論が行われることになるのですが、そもそもこの検討委員の設置自体も議決で決めなければなりません。前例を見る限りでは、この段階で否決されることはありません。その後6回ほどの検討委員会の中で、県の関係部局や参考人を呼んで意見を聞いたりします。県規模なので、市町の方にも必ず意見を聞きます。また検討委員会の最終段階で、県民の皆さんにパブリックコメントという形で意見を伺います。その後、検討委員会内で条例案の合意・決定となれば、直近の定例会にて上程されます。

今年は新しい議員提案政策条例が2件、12月定例会で上程される見通しです。まさに今、両条例案に関するパブリックコメントを募集しています。本記事をご覧の皆さんも、ぜひ条例案を覗いてみていただき、ご意見をお寄せいただきたいと思います。

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ーー正直、県の条例ってわたしたち県民生活に馴染みがないような気がします。生活に直結しているような内容ではないですよね?

そうですね、確かに条例によってメリットを感じにくい点はあると思います。例えば静岡市の条例で路上喫煙防止条例があります。これはみなさんの生活に非常に身近で、かつその効果がわかりやすいものです。一方で、宣言文のような理念的な条例があります。これは県で取り組んでいくことの方向性を示して定着させていこう、ということを意味しています。

例えば先ほども申し上げた検討中の条例の一つに「みんなで取り組む健康長寿条例(案)」があり、この条例の目的は「日本一の健康県を目指す」ということです。この条例はあまり細かい規定をせずに、県で行う事業がそれに縛られてしまわないようにという意図をもってつくられています。

ーー条例は、より私たちの生活に近い市町でも制定できますよね。県の規模で任意条例を制定する意義や効果はどんなところにあるのでしょうか?

任意条例をつくる意義はどこにあるのかというところですが、先述のように、県が行う様々な施策、細かな分野ごとのビジョンをさらに包括する象徴としての価値があると思います。
またこれは私の意見ですが、議員のみなさんも、条例をつくるとなると、普段の活動に加えて取り組むことになりますし、相当勉強します。議会としての経験値・機動力を上げる契機にもなっているのではないでしょうか。また行政側で言えば、県として方向性を打ち出すことで、市町の同様な活動、事業が動きやすくなる面もあると思います。先行して市町でつくられた条例に県も勉強させてもらうこともありますし、その逆もあります。

今後もなにか一つのテーマについて、オール静岡県で関心を高めるきっかけを、県の任意条例制定が引き出すことに期待したいですね[了]

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(取材/文:静岡大学人文社会科学部2年/寺島美夏)

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https://www.pref.shizuoka.jp/gikai/

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