toggle
2019-03-08

「1968年 激動の時代の芸術」レポート 1968年展、そして2019年の私。

レポーター:静岡時代編集部 藤田智尋

現在、展覧会「1968年 激動の時代の芸術」が静岡県立美術館で開催されている。学生運動やベトナム反戦運動など、若者の社会運動が多発した「1968年」を、過激でエキセントリックな作品たちと共に振り返っている本展覧会。静岡時代編集部員である藤田智尋が、現代を生きる「若者」の目線からレポートする。

 1968年は日本の転換期。戦時中の厳しい統制から解放され、若者達は既存の体制に反抗し、大学では学生運動が起こった。「今の若者には当時のような勢いを感じない」と祖父は言っていた。たしかに当時の爆発的なエネルギーに今の私達は敵わない。そんな当時のエネルギーに強い憧れを感じる。今の時代は、当時よりもずっと個性が尊重される世の中にはなった。だけども今の若い人たちに、逆に個性の没落を感じてしまうのは私だけか。SNSで情報が洪水するなか、誰もが分かりやすい評価である「いいね!」を求め、コピーやオマージュが交錯する。みんな同じ服を着て、同じ場所に行く。「ノームコア」に、「ミニマリスト」、そして「若者の○○離れ」……。せっかく多様化、個性尊重を謳っている世の中なのに、何だかそれでは勿体ない。50年後、自分の孫に「2019年ってどんな時代だった?」って聞かれても、祖父母のように「いい時代だった」と言えるだろうか。そもそも、人々が熱狂した1968年とは一体どのような時代だったのか。それを確かめるべく、県立美術館へ行ってみた。
 2019年2月10日から3月24日まで静岡県立美術館で開催されている展覧会「1968年 激動の時代の芸術」は、1960〜70年の日本を芸術面から振り返る。この時代は、政治、美術、演劇、デザイン、建築、……と、さまざまな文化がごちゃ混ぜになって混沌とした空間を作り上げているのが特徴的だ。展示も雑誌や演劇のポスターから彫刻まで幅広く取り扱っている。火炎瓶を投げる学生のモノクロ写真から始まり、徐々に毒々しく鮮やかな色合いの作品が増える。この展示を一言で表すとすると、「エモい、エモすぎる」。エネルギーに満ち溢れていて、見ている側も発狂してしまいそうな世界だった。全裸の人間が公衆の前に現れて万博破壊をうたったり、錯乱状態で製作したようなサイケデリックなポスターなど、もうやりたい放題だ。県立美術館館長がおっしゃっていた話の中に、「この時代の混沌は芸術行為といえるだろうか?この混沌に『芸術』という観念をあてはめた瞬間におもしろさがなくなってしまう気がする」という言葉があった。確かにこの混沌さや熱気は芸術というにはあまりにも大きすぎる気がする。様々なジャンルのアーティストがその枠を超えて交流し、一つの混沌とした時代を作り上げているような印象だ。なので、「芸術」というどこかかしこまった枠ではなく、その時代の人々の活動そのものと言ったほうがいいかもしれない。
 それでは、1960、70年代と現在は何が違うのだろうか。行き詰まりの政治や混乱した状況は、今も当時も少し似ている気がする。決定的に違うのはSNSの普及だ。SNSによって私たちは集団だけでなく個人単位でも簡単に意見を発信できるようになった。しかし一方で情報が混雑したり制限されることも多い。常に誰かに見られているような恐怖感もある。もし60、70年代の人達が自分の活動をインスタグラムやツイッターで拡散しようとしたら、前衛的すぎてすぐに不適切投稿としてアカウントを凍結されてしまうだろう。私たちは一見、自由に見えて自由ではないのだ。だからこそ当時のなんでもありの自由さ、破天荒さには羨ましさを感じる。この展示は、激動や熱気だけでなく、自由な表現とは何かをいまいちど考える機会を与えてくれる。
 1968年とは一体なんだったのか。二回にわたる世界大戦が終わり、日本だけでなく世界各地で暴動やデモが多発し、若者たちが異議申し立てを行った。急速に科学が発展して、社会が変化していくなかで、不満ばかりの既存の世の中を、自分の力で変えてやろうという熱気がつまった時代だ。果たして、その熱気は今の時代にもあるのだろうか。「芸術」とも形容しきれない当時のパワーをぜひ静岡県立美術館で体感して欲しい。現在の私たちについても見つめ直さずにはいられないだろう。そしてきっと見終わった頃には「エモかった……」とつぶやいているはず。

展覧会情報
開催場所:静岡県立美術館
開催期間:2019年2月10日(日)~3月24日(日)
開館時間:10:00~17:30(展示室の入室は17:00まで)
休館日:毎週月曜日
観覧料 前売券一般:800円/70歳以上:400円/大学生以下:無料
当日券一般:1,000円/70歳以上:500円/大学生以下:無料
http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA