美しく風を切れ! バイクの魅力をデザインで伝える仕事

それほど乗り物に興味がなくても、道路を走っているかわいらしい色のバイクに心惹かれる時がある。大学の駐輪場に並んでいる原付を眺めながら、買う機会があったらこういうデザインのものがいいな、と勝手に品定めしている時がある――人と同じで、バイクも見た目が全てではないでしょう。でも購入する際、外観が大きな決め手になることは間違いなし。今回は、静岡文化芸術大学を卒業し、スズキ株式会社でバイクのデザインを担当されている佐々菜都美さんをインタビュー。お客さんの心を掴むデザインの秘訣も伺いました。

今回取材したひと「佐々菜都美さん」
静岡県静岡市出身。6歳の頃に引っ越してきて以来、浜松市にお住まい。静岡文化芸術大学を卒業後、スズキ株式会社に入社。二輪事業本部二輪デザイン部のデザイン課に所属し、バイクのCMFGデザインを担当。小学生の頃は装丁家に憧れていたそう。

「バイクをより魅力的に飾っていく仕事」

佐々さんが担当されているのは「CMFGデザイン」。「CMFG」とは「color/material/finish/graphics」の頭文字で、使う色や素材、全体のバランス、エンブレムなど、バイクの外観の、形以外の部分を総合的にデザインするのが佐々さんのお仕事です。
CMFGデザインは最後に売り上げの明暗を分けかねない責任重大な工程。佐々さんが就職してから最も大変だと感じたのは、上役のかたたちを前にしてのプレゼンでした。
「何故その色を選んだか、どういう意図があってエンブレムをそこに貼るのかなど、自分が考えた案について発表するのですが、より詳しい説明を求められた時に上手く答えられないこともありました。自分の詰めの甘さを感じ、情けなくなってしまいましたね」
自分なりに一生懸命準備しても、シビアな指摘を受ける。ショックだけれど、それがビジネスの厳しさなのだと思い知らされたといいます。プレゼンをする機会は毎月あり、場数を踏むことによってメンタルが鍛えられたそうです。
デザインする時に心懸けていることは、バイクが遅そう・重たそうに見えないようにすること。例えば車体にラインを入れるとしたら、前方から後方にかけて斜めに上がるような線を引く。そうすることで、風を切り、高速で走りそうな風貌にすることができるのです。またバイクの色は流行に左右されることもあり、常に新しさを演出する必要があります。そのために日頃から市場調査やトレンドリサーチを行い、情報をインプットするようにしているそうです。

「反、一点集中型」

ご両親の希望もあり、県内の大学への進学を決めた佐々さん。最初から学びの対象を絞り込まずに、在学中に将来やりたいことを見つけられたらいいなと考え、興味のあったデザインと共に一般教養も学ぶことができる静岡文化芸術大学のデザイン学部生産造形学科に進学。プロダクトデザインを専攻しました。形の見え方や影の付け方の基礎を学ぶデッサンの他に、自分で立てたコンセプトを基にした家具作りなども経験。木工は初体験で苦闘したそうです。でも木屑だらけになりながら、自分で作ると決めたものを皆で切磋琢磨しあって完成させた思い出はかけがえのないものになったそうです。
「学生時代にやったことで無駄だったと感じるものは何もない。全部何かしらに繋がっていて、自分を強くしてくれていると思います」と佐々さん。
専攻のプロダクトデザイン以外でも、高校時代にマンドリン部に所属していた佐々さんは、大学でもマンドリンを続けたいと思い、自らサークルを立ち上げました。また作品作りにかかる費用を捻出するために、居酒屋やショッピングモールでの風船配り、中学生のテストの採点など、様々なアルバイトにも取り組みました。「校外の友達も増えたし、いろんな経験も積めて自分の世界を広げられましたね」。

卒業後、新卒でスズキ株式会社に入社。デザイナーとしての採用でしたが、工場での研修もありました。社員は皆、最初に自分の担当ではない仕事も経験することになっており、佐々さんも様々な業務を担当したとのこと。また佐々さんの代から、チームワークや時間管理の規律を身に付けるために、新人研修で自衛隊にも行くようになったとか。「二泊三日、厳しい規律のある集団生活を送るハードな研修でしたが、とてもためになった」と佐々さん。専門的な知識や技術はもちろん、自分の属する環境を俯瞰的に捉える意識も社会人にとって欠かせないようです。

「未来を見据えた結果選んだ地元での就職」

「将来結婚・出産しても、ずっと働き続けたいという強い希望がかねてからありました。そうすると、地元で就職するのが一番良いかなと。近くにいれば、親も安心できますしね」
実際、佐々さんは一年半ほど前にご結婚されたそうですが、現在もお仕事を続けています。地元浜松市の企業であるスズキ株式会社への就職は、デザイナーとして働く願望を叶えると同時に、佐々さんの人生設計を実現するものでもありました。佐々さんの周りにも、結婚や出産で仕事を辞めてしまう社員の方はほとんどいないそうです。
これまでお仕事をされてきた中でやりがいを感じたのは、出張先のインドで、佐々さんがCMFGを担当したバイクが走っているのを見た時のこと。静岡で自分が作ったものが、海外でお客さんの手に渡り、日常の足として使われているのを目の当たりにして、とても嬉しかったそうです。佐々さんは「今後は、自分が担当したデザインが功を奏して製品が売れたり、すごく良いねとお客さんに言ってもらえたりするようなデザインをしていけたらいいなと思っています」と抱負を語ってくれました。

取材を終えて以来街でバイクを見かけると、それまで気にならなかった細かいところにまで目が行くようになりました。ただかっこいいだけでなく、部品一つ一つの色や素材や配置には、デザイナーの意図と真心が込められている。それを探ろうとしたら、もう目が離せません。思いがけず、バイクにうつつを抜かしてしまいそうです。

今回取材したひと「佐々菜都美さん」
静岡県静岡市出身。6歳の頃に引っ越してきて以来、浜松市にお住まい。静岡文化芸術大学を卒業後、スズキ株式会社に入社。二輪事業本部二輪デザイン部のデザイン課に所属し、オートバイのCMFGデザインを担当。小学生の頃は装丁家に憧れていたそう。

このページは、文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の採択を受けた「静大発”ふじのくに”創生プラン」の協賛により、掲載しております。

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