toggle
2020-02-25

世界的トップメーカーを支える仕事

ホイールは、自動車のタイヤを支えるのに必ず必要なパーツ。静岡県西部を拠点とするエンケイ株式会社は、そんなアルミホイールの世界的トップメーカーだ。乗用車はもちろん、F1などのモータースポーツでも活躍する。今回は業務統括本部・人事グループに所属する鈴木萌々子さんに取材し、世界的メーカーの製品づくりを支える会社で担当する仕事内容やそのやりがいなどをお聞きした。


今回取材したひと 鈴木萌々子さん
静岡文化芸術大学文化政策学部卒業、磐田市出身。学生時代はダンスサークルに所属。趣味はお菓子作りで、子供の頃の将来の夢がパティシエだったこともあり、お菓子の本場フランスへ語学留学に行った経験も。大のディズニー好きで、お姉さんと一緒に1年に5回はディズニーランドへ。

One Step Forward~ちょびっとだけ、先に~

 エンケイ株式会社は、アルミホイールを生産する企業として、OEM(自動車メーカーに供給する、新車の純正ホイール)と、AFT(オリジナルブランドのホイール)の両方を生産しています。静岡県西部に工場を多数持ち、アメリカや中国、東南アジア地域などにもグローバルに展開。「One Step Forward~ちょびっとだけ、先に~」の精神を掲げ、社内全体で「日々の小さな変化の積み重ねによって成長していくことができる」という考えが共有されており、鈴木さんが入社を決めたのもこのスローガンから。「高い目標を一気に目指すのではなく、少しずつでもコツコツと変化し続けていこうというのが私の性格に合っていると思いました。」と語る鈴木さん。社内には観葉植物や熱帯魚の水槽が並び、ジャズが流れる。「オフィスだけでなく工場にも同じように有機質を取り入れています。うさぎを放し飼いしている工場もあるんですよ」これらの世話をするのも社員の仕事。無機質であるホイールを造っているからこそ、有機質な心を忘れないようにとの思いがあるようだ。
 現在鈴木さんが担当する仕事は、社員の個人情報管理、年末調整や賞与に関する運用などだ。他には社内誌の発行なども行うが、ここでも「One Step Forward」を意識して仕事に取り組む。2019年度より、今まで紙媒体で行っていた年末調整の申請方法を電子化するというチャレンジをした。「新しいことを始めようとする時、最初は戸惑いを生んでしまうと思います。操作方法や仕組みの説明会を開き、準備を丁寧に行うことで、社員の皆さんが受け入れやすくなるよう努力しました」ホイール生産に直接関わらないような業務内容かもしれないが、鈴木さんの仕事もトップメーカーを支える重要な要素だ。「新しい取り組みを成功させるために努力をしてきて、それに対して『すごいね、大変だったでしょ』といった暖かい言葉をかけてもらったときはとても嬉しく、やりがいを感じます」と、笑顔で答えてくれた。

社会貢献事業のなかで得られた感動、あらたな想い

 エンケイ株式会社では社会貢献のひとつとして、ASEAN諸国からの留学生や静岡県の学生に奨学金を支給する「エンケイ財団」を設立した。未来を担う学生への支援と、留学生が母国に帰国した際に日本の良いところを広めてほしいとの思いがあるそうだ。鈴木さんはその運営や事務手続きも入社時から担当している。一年に一度、奨学金を支給する学生と交流会を開き、そこで学生に将来の夢や学習状況について報告していただいている。
 担当してからしばらくは、この業務が本当に誰かのためになっているのか実感できず、つらい時期もあったようだ。「つい先日、既に大学を卒業したベトナム出身の奨学生が、会社を訪ねてきました。彼女が日本の企業に就職し、交流会のときに発表した『日本と母国をつなぐ仕事がしたい』という夢を叶えるような仕事をしていると聞き、本当にうれしかったです」とエピソードを話してくれた。その際に改めて奨学金のお礼を言われ、自分の仕事が学生の役に立っていると実感し、強く感動したそうだ。
 しかし、そんな鈴木さんも、学生の頃はどうしても働くということに前向きになれなかったという。「毎朝早く起きて、毎日仕事に行くなんて最初は想像もできなかったです」と語る。「大変なこともあるけど、仕事内容を改善できたことが認められたり、学生がお礼に来てくれたりすると嬉しい。そうした経験もあって段々ポジティブになれました。今は働くことが嫌だなという感情は無いですね」新たに仕事を任せられることも増えたと、終始笑顔を絶やさず教えてくれたのが印象的だった。

なりたい姿、憧れのあのひとに近づくために

 鈴木さんが働き始めて気付いたのは、自分一人だけで働いているわけではないということ。「どんな仕事も必ずチームで動いています。すぐ相談できる上司や先輩、同僚がいて、でも自分が失敗すればみんなに迷惑がかかってしまう。どんなことも協力していかないと、と思います。」
 入社3年目、後輩もいるがまだ先輩に頼ることが多い時期。入社時から指導、相談に乗ってくれている先輩に憧れ、向上心をもち日々仕事に打ち込む。会社の役員会議の司会を任された際、人前で話すのが苦手で、どうしても台本をただ読むだけになってしまいがちだが、同様の場面でその先輩はスムーズに進行、ときにアドリブを交えながら笑いを誘うなど、臨機応変に仕事をこなす姿に憧れたのだという。「これから4,5年目になれば後輩も増えてきます。目標である先輩みたいにアドバイスができるように頑張らなきゃなって思っています」
 学生の私たちには働くということがどんなことかはまだ良く分からないけれど、少しずつでも前へと進もうと努力することは、誰でも簡単にできることではないはず。世界を舞台に活躍する企業を支えているのは、社員一人一人のひたむきな想いやしなやかな仕事と向き合う姿勢なのかもしれないと、鈴木さんに会って感じさせられた。これから、社会人になるまでも、そしてなってからも「ちょびっとだけ、先に」いけるように学生の今から頑張ってみよう。

取材執筆:鈴木聖生(静岡大学人文社会科学部3年)

このページは、文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の採択を受けた「静大発”ふじのくに”創生プラン」の協賛により、掲載しております。

関連記事