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2019-11-28

ゼロから製品をつくりだす開発の仕事

私たちは毎日たくさんの電気機器に触れながら生活している。だけどそれらがどういう仕組みで作られているのか、動いているのかを知っている人は少ない。今回はそんな電気機器の動きを支える電気制御装置の開発を仕事にしている三明電子産業株式会社の片山量弥さんを取材した。製品がきちんと機能する完成品になるまで、一般的には見えない部分でもある開発という仕事について、その内容ややりがいを教えてもらった。


今回取材したひと「片山量弥さん」

静岡県静岡市出身。沼津工業高等専門学校電子制御工学科を卒業し三明電子産業株式会社に就職。現在入社6年目で開発部に所属している。プライベートは、カラオケや音楽ライブに行くこと、キーボードなど多趣味。同僚とマラソン大会に出ることも。小学校時代から「今後どういう仕事が社会に求められるのか」ということに関心があり、将来の夢はサラリーマンだった。

「見えないもの」と向き合う仕事

片山さんの働く三明電子産業株式会社は、静岡市清水区に本社がある企業だ。電気、電子製品の開発から設計・生産を主要事業として行っている。「エレクトロニクス(電子工学)の技術で、あらゆるものを自動化する」という精神のもと、世界トップクラスの技術で「全自動イカ釣り機」や人の動きを実現する「paraMotion」など、高い動作精度を誇る製品の開発を展開している。
片山さんが所属しているのは開発部で、現在はサーボドライバーの次世代機の開発を担当している。サーボドライバーは、産業機械の中に組み込まれ、モーターを制御することで、機械を指定した位置や速度に繰り返し同じように動作させる役割を果たす、産業機械の心臓部を担うとも言われている重要な部分だ。半導体や液晶パネルを製造する機械には、必ずと言って良いほどこのサーボドライバーが使われており、産業用ロボットの分野では欠かせない製品だ。
「開発と一口に言っても、業務内容は多岐にわたります」と片山さん。電気回路の設計からプログラミングによるソフトウェアの設計、出来上がった試作品が設計通りに動くかを評価するデバックと呼ばれる作業など、製品の設計段階から完成までを一貫して担っている。開発と聞いて、ひたすら機械を触って格闘するイメージを持っていたが、実際にはパソコンと向き合って設計作業をする時間が多いそうだ。また、どれだけ設計通りの製品を作ったとしても、それを機械に組み込んだとき、最初はなかなか想定通りに機能しないこともある。こうしたバグは設計段階ではその原因が目に見えないため、改善すべき点がすぐにわからない難しさはあるが、デバック作業の積み重ねでひとつずつ問題を修正していく。このような試行錯誤の連続で一つの製品が世の中に生み出されているのだ。

きっかけは、漠然とした「不安」

沼津工業高等専門学校の電子制御工学科を卒業した片山さんは「この会社でなら自分が学校で学んできたことがすぐに活かせるのでは」との思いから、今の会社に就職した。学んできた分野をそのまま仕事にするというとても順調そうに見える就職の裏で、実は入社前に漠然とした不安を抱えていたという片山さん。「高専在学中に取り組んだ実験やロボコンなどの活動をしていく中で、いま自分が作っている機械は、どういう部品で出来ていて、どういう仕組みで動いているのか、その根本の部分を自分が納得できるように理解しきれずにいたような感覚があって、それが不安でした」。だからこそ、電気、電子製品全ての仕組みを一通り理解した上で仕事がしたいと考えるようになり、開発部を志望した。
仕事をするうちに不安は解消されていったそうだが、それは片山さんの日々勉強しながら仕事に向き合う努力あってこそ。「開発の設計業務の中では否が応でも自分に足りない知識や技術が分かってきます。その都度勉強して得た知識によって、今まで説明できなかった全く別の現象についても理解が深まったりする。そういう点と点が繋がる瞬間がとても面白いんですよね」。

また開発部の仕事の面白さとして、チームを組んで1つの製品を開発している点も挙げてくださった。「仲間と一緒に製品を作って、同じ問題や壁に立ち向かっているからこそ、製品が完成したときの喜びは、その分とても大きなものになります」と片山さんが語るように、同僚との共同作業は仕事のモチベーションのひとつになっている。ちなみに、同社では他社ブランド機器の開発・製造も手がけていることから、社外の人とコミュニケーションをとることも多い。社内外問わず様々な人とのつながりや、その幅広さも社会人になったからこそ得られたものだと話してくれた。

1から10まで理解したい

片山さんの今後の目標は「マイコン(マイクロコントローラ)を自在に操れるようになること」。マイコンとは、あらゆる電気機器に組み込まれ、機器の動作制御を司る頭脳的な部品を指す。「マイコンを扱える人は多くいても、1から10までその構造を完璧に理解している人は、周りにも数えるほどしかいません。だから早くその人たちに追いつけるように経験を積みたい。そしてもっと効率のいいプログラムが書けるようになりたいです」。
そう話す片山さんから感じたのは、社会人としても働きながら学び続ける飽くなき探究心だ。勉強は学校だけでするものではなく、社会に出て仕事をしてもずっと続くものだと改めて感じた。そしてそれは決して大変なだけでなく、仕事を突きつめる上でも大きなやりがいや次への挑戦へと繋がっているのだろう。
なにより、片山さんのプロフェッショナルな働く姿勢を前に「人や社会の役立つ製品をゼロから作りあげる人ってかっこいい!」と強く思った。


このページは、文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の採択を受けた「静大発”ふじのくに”創生プラン」の協賛により、掲載しております。

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