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2017-03-09

800年続く本山茶の新しいマーケティング〜株式会社佐藤園 食薬研究所|働く私の静岡時代

静岡駅から30分ほど車を走らせるとそこは800年の歴史を誇るお茶のまち・本山地区。本山地区に自社茶園と工場を保有し、茶業界では珍しくお茶の栽培から加工、製品化までを行う株式会社佐藤園。一軒のお茶農家からはじまった佐藤園が、現在力を入れているのが「お茶を使った健康食品」の開発です。なぜ普通のお茶だけじゃダメなのか?食薬研究所で特定保健用食品の開発を担当する堀利行さん(2008年入社)に聞くと、「美味しい」だけじゃないお茶をつくる苦労が見えてきます。

株式会社 佐藤園

静岡県静岡市葵区葵区大原1057
TEL:054-270-1001
https://www.satoen.co.jp/

堀 利行さん

株式会社佐藤園 食薬研究所。清水市出身。静岡大学農学部を卒業後、佐藤園へ。大学ではゴルフ部に所属し、バイト先のゴルフ場で佐藤園の会長と出会ったことをきっかけにお茶の開発に興味を抱く。現在はお茶の健康食品の開発に主に携わっている。

効能から病気の予防まで。お茶の可能性を最大限ひきだす製茶メーカー、『佐藤園』

ーー茶業界では珍しく食薬研究所を併設する佐藤園さん。研究所ではどのような取り組みがされているのでしょうか?

佐藤園のはじまりは1軒のお茶農家でした。今でも栽培から製造・販売を一貫して手がけることは佐藤園の大事な柱です。そのなかで食薬研究所というのは、お茶の健康食品や特定保健用食品の開発・品質管理・成分探索を行う部門。商品でいうと、例えば、食事と一緒に飲むことで食後の糖分の吸収を抑えるお茶など、今はお茶だけで4種類を展開しています。

私は2008年に新卒入社して以来、食薬研究所で働いていますが、もともと大学時代は静岡大学農学部に所属していました。当時は、害虫防除、なかでもアブラナ科の野菜を好む害虫を、農薬ではなくて菌(カビ)で殺す方法を研究していました。昆虫に寄生するカビなので人体には影響ないんですが、カビの抽出液を飲まされたりとかしてましたね(笑)

入社したきっかけはイレギュラーなもので、大学時代のバイト先が会長がよく通っていたゴルフ場だったんですよ。大学のゴルフ部の先輩が会長と懇意にしていて。その先輩に会長を紹介していただいて、ちょうど開発業務に力を入れるために人員も増やしていきたい時期ということもあり、縁あって入社しました。農学部で学んできたことを直に活かせることは少ないんですが、もともとお茶も好きでしたし、健康食品などにも興味があったので入りやすかったです。

ーー現在の堀さんはどのようなお仕事をされているんですか?

私の主な業務は特定保健用食品の開発です。お茶に含まれる成分や新たに抽出した成分の機能を調べたり、試作をしたりしています。商品を買う上では見えてこないデータを蓄積して製品化するのですが、なかなか地道なんです。

例えば、この特定保健用食品は、粉末をお湯、もしくは水に溶かして飲むというインスタントティーです。パッケージの裏側に許可表示という項目がありますよね(写真参照)。特定保健用食品となると、商品化する上で消費者庁へ申請するのですが、申請時の資料として臨床試験を行って論文にまとめなくてはならないんです。データを出し、それを論文化してやっと商品として出すことができます。

ーーなるほど、それにしてもすごいネーミングですね。

上司の趣味で、全部、韻を踏んでいるんですよ(笑)。当初、商品化する予定だったのはこの「緑の力茶」1本だけだったんですけど、今は4種類になりました。すべて健康訴求内容をイメージできるネーミングにしてありますね。血圧であれば「抑える」、便通であれば「促す」、中性脂肪であればちょっと効果は違うんですけどイメージしやすいという点で「搾る」(実際には中性脂肪を作るのを抑えるという効果)。

なかなかポンって売られていますけど、苦労するんですよ。立ち上げから臨床試験をして、論文にまとめるまで1年くらいですし。消費者庁の審査も一番長いもので申請から3年だったかな?この中性脂肪を抑える「緑の搾茶」は開発からとなると7年かかっていますね。

健康を訴求できるお茶の開発が今後の目標。

ーーお茶をただ作るだけでなく、品質に「健康」という付加価値をつけていく。きっかけはなんだったのでしょうか?

きっかけは何事もノリだったりすると思うんですけど、他社の健康食品で同じ食物繊維入りのお茶を見てみるとウーロン茶が販売されているのを見かけませんか?こうした健康食品というのは、食事と一緒に飲む商品です。そこで、「食事と一緒は緑茶でしょ」と始まったのがきっかけ。以来、「佐藤園の緑茶味」として健康を訴求できる商品をメインに展開しています。

世の中に健康食品って色々とあると思うんですけれども、「お茶だけで展開している」というのはうちだけです。やはり日本人の食事になじんだ形で、健康をより増進していく。「お茶で健康になる」というよりは、「お茶の剤型・嗜好性・習慣性を利用して健康になる」ということをコンセプトに味を組み立てています。

ちなみに単純にお茶をつくるだけではなくて、機能成分を入れるとその味が出てしまうので、通常の美味しいお茶を作るのとは違うやり方を模索しなくてはいけません。これらは商品化しているのでいい方で、しなかったものもあってですね(笑)。私も開発業務に携わってますから試作をたくさんするんですけど、自分でずっと飲みながらやっていると慣れちゃうんですよ。で、「お!いいじゃん!」って思ったものを他の人に渡すと、「ダメです」と。実際にちょっと時間が経ってから飲むと「これダメだな」ってなるんですよね(笑)。舌はまだいいんですけど、匂いってもっと慣れが生じる器官で、それをクリアしてかなくてはいけない。特に現場の人たちは、通常、普通のお茶を見ている。一番デリケートな素材を見ているので、敏感ですからね。

今は、国も医療費を抑えたいという傾向にあり、健康食品の市場は伸びつづけています。社内的にも、社会的にも力を入れていきたい位置付けです。商品の種類を増やして、お茶で社会に貢献できればと思っています[了]


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