働く私の静岡時代

株式会社しずおかオンライン:海野 尚史社長

感動と行動を創造し、
地域の暮らしに幸せな瞬間を届ける

静岡市葵区にある株式会社しずおかオンラインは、「地域の暮らしに幸せの瞬間を届ける」ために、フリーマガジン『womo』や『イエタテ』、WEBサイト、スマートフォンアプリなどのメディアを創るベンチャー企業です。

しずおかオンラインの強みは、時代やユーザーに合ったメディアを通して、地域の人たちが求める情報を求められる形で届けること。しずおかオンラインのようにフリーマガジンやWEBサイト、アプリ開発、近年ではイベント開催など、時代に合わせたメディア制作、情報発信をしている会社は少ない。

さらに、サービスの開発(企画)から営業、制作、流通までを自社で一貫して行うため、制作に携わるスタッフは、企業やお店、書店などの店舗に自ら足を運ぶ営業(顧客担当)、編集・制作・マーケティングスタッフ、WEBデザイナー、システムエンジニアなど多岐にわたります。

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静岡と東京を往復して、静岡の本を作りはじめた

今から23年前、しずおかオンラインの前身となる出版社フィールドノート社を創業した、株式会社しずおかオンライン代表取締役社長 海野尚史さん。

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「地元の情報を地域の人に届ける出版社として創業しました。地域の情報と言っても、新聞やテレビが既に取り上げているような情報ではなく、“自分が知りたいけれど、テレビでもラジオでも新聞でも取り上げていない情報”です。個人的にもそうした情報をもっと知りたいし、日常生活の中に沢山あるような気がしていたんです」

創業した1993年はインターネットエクスプローラが登場する少し前。まだインターネットが普及していなかったことや、海野社長自身がそれまで東京で編集の仕事をしていたこともあり、一番身近な媒体として「雑誌」を選んだそうです。

「東京の元同僚のカメラマンやデザイナーに格安で仕事をお願いしました。当時はメールもなかったのでFAXで原稿を東京に送ったり、FAXでも送れない写真は郵便だと時間もかかってしまうので、新幹線で直接東京まで持ち込み、デザインをお願いしました」

頭の中の8~9割は「本をつくること」だった

実は、海野社長が一人で会社を立ち上げてから、最初のスタッフを採用するまで、半年ほどかかったそうです。

「元々、組織や会社をつくることに対して意識が低かったんです。頭の中の8~9割が本をつくることに意識がいっていましたね。会社をつくることが目的ではなかったですし、要はやりたいことを実現するためにチーム(人)が必要だった。そして、その人たちが安心して仕事ができるように毎月給与を支払わなくてはいけない。お金がきちんと回るようにしていかないといけない。お恥ずかしい話ですけれども、最初の頃は月末の給与を支払う時に、「お金、大丈夫だろうか?」と慌てたくらいです。もちろん一度も支払いを遅滞したことはありませんけどね」

当時の出版社の売り上げのベースは販売収益。本をつくるのに2~3ヶ月かかり、店頭に並んだ後、実際の売上が分かるのは半年から1年かかります。また、入金はその30日~40日後であることが一般的です。

出版業はお金が常に先に出ていってしまうビジネスモデルで、普通の出版社はそれを解消するために、日本出版販売などの取り次ぎが本を納めた時点で一旦全て売れたことにして立て替えてくれるそうです。

「大手取り次ぎでは扱ってもらえず、資金繰りには苦労しましたね。創業から10年くらいは作りたい企画が沢山あったので、どんどん本を作っていたんです。数人しかいないのに、年間10冊以上もの本を作ったこともありましたね」

フィールドノート社創立から8年後、「しずおかオンライン」設立

「社員も大変、お金も大変。このままではやりたいこともできない」という状況を解決しようと、海野社長が取り組んだことは会社を二つに分けることでした。そこで誕生したのが、しずおかオンラインという会社です。

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「しずおかオンラインという新しい会社を版元(企画)にして、フィールドノート社がその制作を行うという役割分担です。フィールドノート社は本を納めた時点で請求が立てられれば、お金の回収が早くなります。そして版元の方は自分たちが立てた企画で利益を出すために広告をきちんと売っていこうというように、それぞれの役割を明確にし、意識を高めていけるような形にしました」

しかし、売りたいものをつくりたい版元と、人手不足の制作部隊とで同じ1冊の本をつくることは、現場の対立を生むことになり、すれ違いが起きてしまったそう。

2006年、一つの会社に統合。書店で売る本だけでなく、2000年に創刊したフリーマガジンの広告売上比率を高めていくことで経営の安定性を確保していくようになりました。

しずおかオンラインが考える、地域の媒体社としての役割

海野社長は、しずおかオンライングループのミッション「感動と行動を創造し、地域の暮らしに幸せな瞬間を届ける」において、その幸せな瞬間をどう創造できるかが自分たちの大きな課題と言います。

生活者の中には家にいる時は新聞を読むけれど、通勤時ではスマートフォンで新聞の続きを読んだり、街に出たらフリーマガジンを手にとる人もいます。

「日常のシーンによって接触する媒体は違います。メディアごとにコンテンツの中身を編集するのではなくて、生活者の動線にあわせて情報を編集していくことが必要。その上で、自分たちが提供した情報を使って、幸せな瞬間・時間を過ごしてもらうことが出来てはじめて、地域の媒体社の役割を果たせると思いますし、自分たちもそこまでやりたいと思っています」

海野社長の「情報提供の先に、日常生活の中で幸せと思える瞬間・行動を生み出すところまで支援したいですし、街が活性化することで地域全体が経済的にも豊かになるような役割を果たしたい。それがうちのような地域の媒体社の役割だと思う」という言葉に、しずおかオンラインのグループミッションにある「幸せ」の意味が初めて腑に落ちた気がしました。

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「“自分の使いたい”をつくる」

しずおかオンラインのメディアづくりにおける一つの判断材料は「そのメディアで今日一日をどう楽しく過ごせるか」。

「うちの会社には、「自分の使いたいだけを創る」という標語があるんですよ。僕も今は静岡市民ですし、社員も静岡や藤枝、浜松、三島など地域は様々ですが、みんな一人の生活者です。自分の中に読者がいるはずだし、そこにきっと読者が何を求めているかのヒントがある」

ただ、それには自分の気持ちの中に下りていくことが必要です。ある部分までは下りていけても、そこから先にさらに掘り下げていくことは意識しないとできない、とのことでした。

「アンケートで見えてくるものも確かにありますが、それはあくまで表層的なもの。その人がその質問をどう受け止めているのか、その人はそもそもどういう人なのかを掘り下げて初めて見えてくるものがある。それは自分も一人の生活者というところを軸に考えてみると、その中に答えが眠っていることがあると思います」

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【「出版社で働いて静岡の魅力を伝えたい……」。そんな時、『womo』と出会う」/
『womo』編集長 風間千裕さん】

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