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2019-04-12

「大学で学ぶって高校までと何が違うの?・3」大学院生の先輩と考えてみた

さまざまな経験を経て、いまは静岡大学農学部の大学院で研究している先輩がいる大学で学べること、挑戦できること。「大学生活」のリアルを話してくれました。


写真中央:桜庭俊太さん(静岡大学大学院総合科学技術研究科農学専攻2年)/ 右:聞き手・田代奈都江(静岡大学人文社会科学部・静岡時代51号編集長)

田代「これまで二人の先生に、「高校での学びと大学での学びはどう違うのか」について伺ってきました。桜庭さんは大学時代どんな学びをしてきましたか?」

桜庭さん「僕は高校時代、特にこの学問を究めたい! というのが無かったから、何となく理系っぽくて、ガツガツ研究できそうというイメージだけでバイオサイエンスとかを学んでみたかったんです。でも希望の大学に落ちてしまって、この一年を棒に振るよりはとりあえず大学に行こうと思って滑り込みで今の大学に進学しました。実は将来のこと常にちゃんと考えて行動しているようなタイプではないです……(笑)」

田代「なかなか高校時代に将来のことを考えるのも難しいし、実際思い立って学部選択をした人も少なくないですよね。大学に進学してから、高校までの授業とココが決定的に違う! と感じたのはどんなところでしょうか」

桜庭さん「やっぱり一番は、大学の先生がその道のエキスパートなところです。先生ってその分野の知識においてはプロフェッショナルで本当にすごい存在なんです。教えるためだけでなく、自分の研究を進めるために大学にいるから、まずスタンスが違う! 授業ではまるで自分の趣味を語るみたいに楽しそうに教えてくれる先生も多いですよ。学生側がやる気なしに聞いてると、授業もコミュニケーションですから先生も本領発揮にならないけど、ちょっと前のめりになると、先生の目が輝きます(笑)」

田代「分かります……寝ててもテストで点を取れれば単位は出るかもしれないけど、ほんの少しちゃんと話を聞いてみたら、先生の底知れない知識のおすそ分けをもらった気がして「この分野興味あるかも」って気づけるきっかけになったりしますよね! 桜庭さんは、大学院は環境社会学で、これまでとは違う分野ですが、その選択をしたきっかけがあったのですか?」

桜庭さん「農学部には地域が抱える課題をその地域に出向いて考える実践農学演習という授業があり、その授業で僕は富士宮市・旧芝川町の稲子地区に行きました。そこにはよく言われる少子高齢化だけでなく、もっと細かい課題がありましたが、そもそもどの課題が優先だとか、全く判断ができず悔しさが残る実習で……。そんなとき、授業の一環で講演に対馬市役所の方が来てくれたんです。それがきっかけで思い切って休学して、二年間対馬に暮らし、集落支援員という仕事をしました。大学院で環境社会学を学ぼうと思ったのはその二年間があったからなんです」

田代「なるほど……集落支援員って初めて聞く仕事です」

桜庭さん「集落支援員は、市役所の職員として地道な聞き取りだとか事情を調べたりするのが主な業務です。僕が行っていた頃は、総合計画策定のための市民ニーズの聞き取りがメインでした。とても興味のある仕事だったけど、まだ腰を据えて課題について考えることができないと思って、大学院では環境社会学を選択したんです。本当に偶然の積み重ねで、高校の進路選択時にたまたま選択した学問から幅が広がって今に至ります」

田代「思い切って対馬に行ったことで、その後の大学の勉強に対する姿勢ってどう変わったんですか?」

桜庭さん「対馬での二年間は、大学で座っているだけじゃ得られないようなことを、見たり聞いたり実際に自分で体験できたから、学問という視点からその地域を理解するときに、役立っているかなと思うよ。経験があるからこそ、学んだことを経験に落とし込めたり、自分の経験に言葉で説明がついたり、そんな感じがする。今なら学部時代の実習で感じた課題に応えられそうな気はします。稲子と対馬は全然違う地域だけど、根本で似ている部分があって、経験があるからこそあの時のモヤモヤに説明がつくようになったかも」

田代「分かります! 私もこの冊子『静岡時代』をつくることを通して県内のエキスパートな先生方の力を最大限にお借りして、気になる話をとことん聞いて、これまで勉強なんて大嫌いだったのに、勉強って意外とおもしろいんだ! と生まれて初めて感じました。自分の興味のあることを自らの足を使って学ぶと、それはどんな座学で学んだことより心に残っている気がするし、ふとした瞬間、人生に活きる」

桜庭さん「うん、役に立つか分からないけれど、でも存在している根本の疑問に正面から、利害勘定なしにじっくり向き合えるのが大学という場所だから、僕たちは好きなようにとことん学べる。給料のためにやっているわけじゃないし、それが本当にこれからの人生に役立つかは確かではない。でも、単に自分が追求したいことを追求することが許されている場というのが大学であり、僕たちはそんな風に授業や先生方を自由に活用していいんだと思います」

田代「最後になりますが、私たちは大学にいる期間でどこを目指せば良いのでしょう」

桜庭さん「自分で考える力を養うというところだと思います。一般的に正しいと言われていることすらも疑って考えて、実証するのってすごく力がいることなんだけど、でもそれを疑わないでただ流される人ばかりの国だとこの先不安だもん。知識を詰め込むだけではなくて、本質的なことを考える力を身に着けることを僕たちは求められていると思う。あと、多少の直感力を信じて自分の興味を追い求めることも大事。僕は半ば勢いで大学での進路を決めていったところがあって、それがあったからこそ大学で学んだことが今、自分のためになっていると実感できています。対馬に行くことを決めたあの頃のような直感力はちょっぴり失ったけど、これまでの期間でさまざまな場所に飛び込んだからこそ、何より経験と判断力がついてきた! キッカケが転がってきたら拾ってみてもいいと思います。多少今までのレールを外れても案外うまく方向転換できるもんです」

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桜庭俊太さん
静岡大学大学院総合科学技術研究科農学専攻2年。キッカケを大事に、まさに興味のあることならなんでも挑戦! 精神の持ち主。パイセン、経験値が違います!

今回のお話をもっと深めるおすすめ本『鳥栖のつむぎ―もうひとつの震災ユートピア』関礼子・廣本由香・編(新泉社)
東日本大震災での福島第一原発事故。子を守るため、佐賀県鳥栖市に自主避難した母たちの迷い・葛藤が綴られています。彼女たちの「優しさ」と「痛み」が詰まった一冊。

藁科希英・文 静岡英和学院大学人間社会学部2年/ 谷充代・文 静岡大学人文社会科学部1年 / 諸井彩加・WEB文 静岡大学農学部3年

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