「観光」を学問として学ぶ〜日本大学国際関係学部国際総合政策学科教授・宮川幸司先生
みんなが一度はしたことがある旅行や観光。とっても身近なことだけど、これを学問として静岡で学ぶってどういうことだろう。
宮川先生 実は、私は大学生の頃は法律の勉強をしていました。だから、大学からずっと観光学を研究してきたわけではないんです。でも昔から旅行は好きで、奈良・京都の神社仏閣や、柳田國男の『遠野物語』の舞台、太宰治の故郷などに行きましたね。そんな「旅行が好き」という思いから卒業後は国鉄に就職し、旅行センターや出向先の旅行会社で働いていました。
観光学の研究に取り組むようになったきっかけは、旅行会社にいた時に担当していた短大の学長さんに論文を書くように勧められたことでした。多忙ながら何本か論文を書いたところ、それが学会誌に取り上げられました。その後、その短大の教員になり、観光学の研究をするようになったんです。
——観光ってかなり身近なものですが、学問となると難しいものに変わってしまう気がします。観光学の面白いところはどこですか
宮川先生 様々な分野が絡み合うところでしょうか。観光学はすごく領域が広いので、幅広く学ばなければ全体像がつかめないのではないかと思います。例えば、観光産業だったら、マネジメントやマーケティングの知識が必要ですし、観光対象というのは文化的なものあるいは自然なので、それらは、歴史学、文化人類学、社会学、環境学などに波及していきます。また国際情勢や政治などにも深く関連しています。外交問題やテロ、紛争地域への渡航規制などですね。
もう少し身近に旅行に関わるもので考えてみましょう。観光業には、三つの柱になる産業があります。まず一つ目は、交通業で旅行者を運ぶ航空機、鉄道、バスなどが当てはまります。二つ目の柱は旅館やホテルの宿泊業。三つ目は、そういった材料を使って旅行を組み立てる旅行業です。この交通、宿泊、旅行が、三大産業ですが、そのほかに関連産業として様々な入場拝観施設、例えば遊園地やテーマパーク、また食事施設やお土産屋さんなどもあります。これらすべてが観光学の一つの要素となります。少し考えただけでもこの学問の広さが分かってもらえるのではないでしょうか。
——確かに考えてみると観光って様々な要素がありますね、興味深いです。そんな観光学を学んでいく中でよかったことはありますか
宮川先生 先ほども述べた通り、非常に学際的で広い領域を持っているのが観光学なので、様々な分野の知識を身につけなければなりませんでした。しかしそこから得られたものは大きかったですね。例えばインドネシア・バリ島の文化人類学的な知識や中国の古代史など、観光学をやっていなければあるいは知らないままだったかも知れませんね。
また、この研究を通して地域に貢献できることも良かったと感じています。この大学に勤務するようになって、地域との関わりが増えたことで地域が抱える課題に取り組みたいと思うようになりました。現在、私のゼミでは「伊豆長岡温泉の再生」というテーマを扱っています。伊豆長岡温泉は歴史のある温泉ですが、現在は他の温泉地と同様観光客の減少が課題になっています。高度経済成長期のような活気が損なわれてきているんですね。そこで、若者の意見も取り入れ、地域を活性化させたいという地域の要望のもとゼミ生とともに活動しています。若者の意見は、私たちが思いつかないような斬新な視点もあり素晴らしいアイデアも出てきます。だから、そういった意見を伝えていきたいと思っていますし、地域からも期待されています。せっかく、地域にある大学なのでそういった課題の解決に少しでも役に立てたらと思っています。——なるほど……、それは静岡の大学で学ぶからこそ得られたものですね。そんな地域とのつながりを大切にしてこられた先生が思う、高校と大学での学びの違いって何でしょうか。静岡の大学で学ぶ良さはどこにあるのでしょうか
宮川先生 高校までは基礎・基本の部分を学ぶ時期なのかなと思います。それに比べて大学は自分が勉強したいことを専門的に学ぶ場だと思います。高校までと違うのはそこだと思いますね。
ただ高校を卒業するとき大学にどんな専門的な学問があるのかわからない人も多いと思います。そういう人は高校での学習・生活の中で、先輩や先生との交流を通じて自ら情報を集めてください。やはり、実際に学んでいる人の意見は参考になると思います。名前やイメージだけでは分からないことがたくさんあるので、実体験を聞くことは重要だと思いますね。これは、どこで学ぶかにも通じると思います。学ぶ上で生活環境は大切な要素です。私は、静岡は都会ではないですが落ち着いていて、食べ物がおいしく、人も優しいので学ぶのに適した環境だと思いますね。
それら集めた情報を基に自問自答して欲しいと思います。中には、「あの企業に就職したいからこの学部・学科にしよう」というように就職を意識して進路を決めようとする人もいるかもしれません。それももちろん大切な選択手法ですが、私は大学では本当に自分が学びたいと思うことがあればそれを学んで欲しいと思っています。以前旅行会社の方とお話する機会があり、やはり企業が欲しいのは即戦力となる実務的な知識をもつ学生なのでしょうかという質問をしたことがありました。その方は、「もちろん入社してすぐに即戦力になる人材も必要ですが、旅行業界にあまり関係がないような学問を学んできた学生でも数年たつと伸びてくることがよくあります。彼らは他の学問領域でも多くの知識という種を持っていますから、それが色々な企画に活きてくるのです」と話しておられました。私にも観光以外の分野で活躍している卒業生がたくさんいます。是非、皆さんも自分の本当に好きなこと、研究したいことを見つけて一生懸命取り組むことでたくさんの種を持ってもらいたいですね。
——なるほど……、それは静岡の大学で学ぶからこそ得られたものですね。そんな地域とのつながりを大切にしてこられた先生が思う、高校と大学での学びの違いって何でしょうか。静岡の大学で学ぶ良さはどこにあるのでしょうか
宮川先生 高校までは基礎・基本の部分を学ぶ時期なのかなと思います。それに比べて大学は自分が勉強したいことを専門的に学ぶ場だと思います。高校までと違うのはそこだと思いますね。
ただ高校を卒業するとき大学にどんな専門的な学問があるのかわからない人も多いと思います。そういう人は高校での学習・生活の中で、先輩や先生との交流を通じて自ら情報を集めてください。やはり、実際に学んでいる人の意見は参考になると思います。名前やイメージだけでは分からないことがたくさんあるので、実体験を聞くことは重要だと思いますね。これは、どこで学ぶかにも通じると思います。学ぶ上で生活環境は大切な要素です。私は、静岡は都会ではないですが落ち着いていて、食べ物がおいしく、人も優しいので学ぶのに適した環境だと思いますね。
それら集めた情報を基に自問自答して欲しいと思います。中には、「あの企業に就職したいからこの学部・学科にしよう」というように就職を意識して進路を決めようとする人もいるかもしれません。それももちろん大切な選択手法ですが、私は大学では本当に自分が学びたいと思うことがあればそれを学んで欲しいと思っています。以前旅行会社の方とお話する機会があり、やはり企業が欲しいのは即戦力となる実務的な知識をもつ学生なのでしょうかという質問をしたことがありました。その方は、「もちろん入社してすぐに即戦力になる人材も必要ですが、旅行業界にあまり関係がないような学問を学んできた学生でも数年たつと伸びてくることがよくあります。彼らは他の学問領域でも多くの知識という種を持っていますから、それが色々な企画に活きてくるのです」と話しておられました。私にも観光以外の分野で活躍している卒業生がたくさんいます。是非、皆さんも自分の本当に好きなこと、研究したいことを見つけて一生懸命取り組むことでたくさんの種を持ってもらいたいですね。
宮川幸司先生
日本大学国際関係学部国際総合政策学科教授。研究分野は観光学。現在は伊豆長岡温泉など静岡県東部の観光振興に関する研究を行っている。旅行会社での勤務経験をもとに現場での話を取りいれた授業を展開している。
文・西ヶ谷彩華(静岡大学人文社会科学部言語文化学科2年)/ 調整・峰松美祈(静岡大学農学部生物資源科学科3年)