街角の異界巡礼
異界とは具体的にはどんなところで、どんな人がいるんでしょう。普段私たちからしたら非日常とも言えるそんな世界の空気を実際に吸ってみたい。(静岡時代30号/巻頭特集「異界、静岡の扉」)
■静岡の魔人が営む浅間通り「あべの古書店」へ
「浅間通りの真ん中らへん、なんかやばい人がいるんだよ」
そんな情報のもと訪れた「あべの古書店」というお店。店長は鈴木大治さん。別名アヤメさんは劇団の主宰者としても活躍しているひとです。劇団の名は「水銀座」。水…銀……? 気になる人は検索してみてください。寺山修司というか、天井桟敷というか。アンダーグラウンドな世界が広がっています。とにかくすごい世界です。
アヤメさんは静岡の魔的な一面にも見識の深い方で、ラジオに出演したり雑誌に文章も書いたりしている方です。天井までみっしり古本が詰まった店内、取材は「静岡の魔的な一面を教えてください」という編集長の身も蓋もない一言から始まった。「もっと具体的な言い方ないんかい!」と思う執筆者だったが、正装(聖装?)の着物を纏ったアヤメさん(50代男性)は楽しそうに「一杯あるヨオォーーーーッ!」と仰った。
さて、このとき語られたエピソードの数々をどのように説明すれば良いのでしょう。かなり具体的な地名や場所がポンポン出てきて、「えっ、そんなところが……!?きゃーっ!」というお話がたくさんあったのです。
どこに人骨がいっぱい埋まってるとか(ヒント:江戸時代の寺町)とある山周辺では怪奇現象や猟奇事件が起こるとか(ヒント:市民にはなじみ深い山)霊山富士と三保はそういう団体に愛されてる場所だとか、やばい実験を始めちゃった先生が静岡市内にいたとか(ヒント:明治後期の有名なオカルト騒動、SADA子さんが関係……? やたらと人が飛び降りるマンションだとか(ヒント:○○町)徳川家康の遺体がどこにあるだとか(ヒント:魂とボディは別なんだ!)昭和の3大超能力者が宇宙人と交信したといわれる喫茶店(ヒント:駅周辺)だとか。
でるわでるわ静岡の魔的な側面たち。まさかの大漁っぷりに興奮した部員達は「やっぱ俺達の静岡は只ノンビリしてるだけじゃなかったんだ!! もっとヤバい土地だったんだ!! 」と感激し、誰に話して怖がらせようかな、とワクワクしながら帰ったのでした。(注:やばいとか言ってますがアヤメさんは面白くていい人です。ただの古本屋とは格の違う「古書店」の空気、体験しないと大人になれませんよ!)
◉鈴木 大治(すずき だいじ)さん
古書店:「あべの古書店」店主。演劇:「水銀座」主宰。音楽:「MAGIN RECORDS」主宰。所属バンド:「マジックランタンサイクル」「大中」。「あべの古書店」は浅間通りにある古書店で、店内に入って左側はまさに「古書」という貴重な本が並んでいる。本一つ一つが過ごしてきた時間がグラデーションを産んで、本棚と本棚の間には不思議な空間が産まれている。
Twitter「古書肆・書籍と処女」→ https://twitter.com/InkRings
【取材/静岡時代】
◉鈴木 智子(すずき ともこ)
静岡大学大学院1年。静岡時代30号巻頭特集「異界、静岡の扉」の編集長を務める。
◉鈴木 喜子(すずき よしこ)
静岡常葉大学(瀬名キャンパス)造形学部所属。本記事の取材、執筆者。
▷記事掲載号:2016/04/01発行