「オリジナリティを重視しない」平野雅彦先生(静岡大学教育学部)

様々な専門分野で研究を重ねてこられた「知識の泉」をもつ先生たちのコラムリレー【せんせいの引き出し】。今回は、情報意匠論を研究されている静岡大学の平野雅彦先生が綴るお話をご紹介します。


「情報意匠」という考え方に思い至ったのは、1990年代のはじめでした。世の中では、オリジナリティが声高に叫ばれるなか、わたしは、オリジナリティを言う前にもっと重要なことがあるのではないかと考えていました。そこで反オリジナリティの立場を取る情報意匠をさまざまな課題解決型の方法論として体系化できないか模索をはじめました。それは必ずしもカタチになったわけではありませんが、その劈頭にいくつかの視点を用意しました。

情報意匠論は、「型に注目し、型に学ぶ」「カタやカタチから情報を取りだし、カタチに情報をのせていく」「オリジナリティやアイデンティティを重視しない」「『ない』や『不足』の去来に耳を傾ける」「自然界のカタチに学ぶ」「『見立て』を使って物事を創造する」「物語や神話、そのマザータイプに学ぶ」「『イキ』『スイ』『ツウ』の振る舞いを重視する」「境やキワ、間やにじみを重視する」「物事の間にある『関係』を注視する」「微細なものと宇宙大のものを重ねあわせる」「生命の仕組みやふるまいにフォーカスし続ける」「見えざるものの去来に聞き耳を立てる」「言語の奥に潜む古の暮らしや哲学を掘り起こす」「ライブラリーやミュージアムに注目する」「古今東西学びの場の方法に学ぶ」などがそれです。頓智のような文言に思えるでしょうか。一つひとつを解説している紙幅はありませんが、ここでは情報意匠論を提唱する上でわたしがもっとも重視にしていることを述べておきます。

_IGP0851

それは「型があるから、型破り」という言葉に集約されます。ある事柄、現象に潜む「型」(フォーム form、モデル model、パターン pattern、スタイル style、タイプ type、モールド mold、メソッド methodなど)に注目して、その型(方法)を取り出し、方法として真似、生かし、新たな価値を生むことを意味します。真似は、すなわち「稽古」という意味なのです。なぜ茶の湯や華道、武道があれほどまでに基本を忠実にいうのでしょう。茶の湯にいたっては、所作を畳何目というところまでの正確さを求めていいます。その答えはいたって単純です。そこに「美」があるからです。まずは先人の美意識と思想に敬意を払う。これは精神論だけの話ではありません。そういった愚直なまでに型を守ってこそ、初めてその先に「型破り」、つまりオリジナリティが生まれ落ちるのです。最初から型破り(オリジナリティ)など存在しません。そもそも型がなければ「型なし」なのです。

ところで、「情報意匠論」の中心にあるのが「歴史に学ぶ」という態度です(学ばない、と言うことも含めて学びます)。それはなにも古の時代にのみ目線を向けることではありません。今この瞬間も歴史のうちにあることを忘れてはなりません。それならば、今という時代を生きているわたしたちの役割は、それらに新たなる価値を与えながら、未来へと向かって橋渡しすることにあります(レガシー)。そのときに効果を発揮するのが「情報意匠論」という方法なのです。

最後に哲人ヘーゲルのこんな言葉も引用しておきましょう。
We learn from history that we do notlearn from history.

■平野 雅彦(ひらのまさひこ)先生
国立大学法人静岡大学 教育学部特任教授 /人文社会科学部客員教授。
ふじのくに文化情報センターセンター長(公益財団法人静岡県文化財団)、静岡県広報アドバイザー(分野別)、公益財団法人静岡市文化振興財団評議員・助成事業審査員・静岡市民文化会館運営委員会長、静岡市立芹沢銈介美術館協議会会長他要職多数。
・平野雅彦研究室→ http://www.hirano-masahiko.com

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


静岡時代の活動について
静岡時代奨学基金