大學日和

「ニワトリと生物多様性」〜学びの系譜〈常葉大学ニワトリ研究会〉

飼育者が年々減っている日本鶏の保護や周囲への環境教育を行うことを目的に、国内外のニワトリの飼育を行う常葉大学ニワトリ研究会。実はニワトリには各地で飼育される畜産用の他に観賞用に品種改良されたものもあり、日本生まれの品種から世界各地の品種までさまざまです。観賞用のニワトリが将来、絶滅の危機?ニワトリライフを楽しみながらも生物多様性と真剣に向き合う大学生たちを追いかけました。
【取材/文:静岡大学人文社会科学部・寺島美夏】

世界で愛される「観賞用のニワトリ」って?

「コケッコケッーー」。緑に囲まれた常葉大学富士キャンパスの正門をくぐると、すぐ横にある飼育小屋からニワトリの元気な鳴き声が聞こえてきます。常葉大学のニワトリ研究会は6年前、有志学生によって立ち上げられた日本鶏の保護を目的とする研究会です。きっかけは、大学の授業で日本鶏の固有種の飼育者が減っていると知ったこと。現在は総勢11名が所属し、日本鶏4種、外国鶏4種の合計21羽のニワトリを飼育しています。

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〈セブライトバンダム〉
イギリスが原産の小型のニワトリ。ゴールドとシルバーの内種があり太い縁取りが体全体にあるのが特徴で見た目が華やか。人懐こくおとなしい性格だが品種改良により卵を温めるなど鳥の本能が失われている。担当の林紗希子さん(社会環境学部3年)いわく、「人間による改良が進み本能が薄れているニワトリ」文化祭でニワトリ研究会が実施するニワトリ総選挙にて2年連続1位で殿堂入りを果たした。

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〈モダンゲーム〉
同じくイギリスが原産ですらりとした足が特徴。ゲームという名の入るニワトリは闘鶏に使われる品種である。担当の新井達也さん(社会環境学部3年)の可愛いと感じた瞬間はお散歩に出た時に肩に飛んできてくれたこと。

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〈ポーリッシュ〉
毛冠というふわふわのアフロの毛の様なものがある事が最大の特徴。オスとメスで毛の量が異なる。取材時はまだひよこだったが比較的大きくなる品種取材時は手乗り肩乗りしていた。担当の中野投哉さん(社会環境学部3年)は日に日に体重が増えるのが嬉しいそう。

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〈ミノヒキ〉
愛知県と静岡県で生まれた日本系の固有種。飼育人口が少なく大学で増やすことが目標。体格が大きく、元気が良いため担当の海野弘幸さん(社会環境学部4年)にはしばしば飛び蹴りをしてくることも。

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〈ウズラオ〉
江戸時代に突然変異で生まれ、ウズラに似ていることから命名された。他のニワトリと違って尾羽が無いためおしりが丸くコロコロしている。順化すると人くそばに近寄ってきたり手にのってくるところが可愛かったそう。

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〈フェニックス〉
イギリスとドイツが原産国のニワトリ。耳たぶが赤いニワトリが多い中黄色や白色な事。ミノ羽という特徴的な羽は地面に着くほど長い。大学内で飼われているフェニックスは体は大きいが体が弱く、少し人見知りな性格をしていると担当の望月裕佳さんは紹介してくれた。(社会環境学部2年)。

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〈チャボ〉
小型でおとなしく初心者向け。卵や卵の形のボールを温める習性がある。黒や模様など見た目がユニークなものが多い。本来おとなしい性格だが大学内のオスはとっても元気でメスが来ると威嚇してしまうほど。しかし抱っこはOK。新井達也さん(社会環境学部3年)と酒井利樹さん(社会環境学部2年)がお世話をしている。

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〈小シャモ〉
江戸時代初期にやってきたシャモを改良したニワトリ。卵は味が濃厚で他の観賞用よりおいしいと部活見学の際に実際に食べた林紗希子さん(社会環境学部3年)は証言する。シャモと違い気性は穏やかで飼育者の後ろをちょこちょこついていく様子はニワトリ研究会内の憧れ。

そもそも、彼らが保護している観賞用のニワトリとは、畜産用の卵や食肉を目的として飼われているニワトリとは目的も種類も異なります。例えば金魚が観賞用にコイやランチュウなどに品種改良したように、原種のニワトリを観賞用の見た目のニワトリに品種改良したものです。これらのニワトリは、世界各地のニワトリ愛好家たちによって飼育され、品評会などでその美しさが競われています。今年、ニワトリ研究会が出品したミノヒキミノヒキの特徴である蓑羽がきちんと生えそろっていたこと、ミノヒキの中でも「黄笹」という非常に珍しい内種(頭から頸部にかけて黄色の羽を持つ内種)であることなどが評価され、優秀鶏を受賞しました。

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普段はこれらのニワトリの世話や記録を行い、年に一度その結果を報告書にまとめるニワトリ研究会ですが、この報告書は孵化飼育技術から人工孵化・飼育実験、学生の卒業研究論文まで丁寧に記述されています。また、時には小学校などをニワトリと共に訪問し、子どもたちへの環境教育をすることもあります。部員一人一人が担当のニワトリを持ち、親のような愛情をもって接する研究会ですが、やはり生き物を扱う為休みのない世話ならではの大変さも。「ひよこが来た時には糞を頻繁に変えなくてはいけないし、食べ散らかしの処理などとても大変でした」と部長の林紗希子さん(社会環境学部3年)は振り返ります。

そうした活動の中でも、ニワトリ研究会の重要な任務の一つが「繁殖」です。人に譲ってもらったり、ニワトリの卵を専門に扱うサイトで卵を買うなど、減少しているニワトリの数を「守る」だけでなく「増やす」ことも試みています。大学で生まれた卵は人工ふ化装置にかけられることもしばしば。人口ふ化装置は、ニワトリが生んだ卵を湿度、温度を保ちふ化させる機械です。特に気性が荒い品種は人工ふ化装置でふ化させた方が順化しやすいという利点があります。(【順化】……毎日話しかけたり、触れ合ったりするなどして人間に慣れさせること)

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現在の繁殖一大プロジェクトはミノヒキを繁殖させることです。愛知県と静岡県で育てられた日本鶏の固有種ですが、特に大学で飼育されている「黄笹」は飼育者が減りとても貴重な存在で、今ではほとんど見かけることがありません。大学で育てているミノヒキのメスはなぜか卵を食べてしまうため非常に難しい挑戦です。

「もし、一つの病気ですべての生き物が死んでしまったら困りますよね?それを防ぐためには、いろいろな生き物を育てて多様性を保たなくてはなりません」と中野投哉さん(社会環境学部3年)。人口減少や飼育者の高齢化により、日本鶏の飼育者は減少しています。ニワトリ研究会は大学生という立場を活かし、観賞用のニワトリやその保護について知ってもらうための活動も行なっています。11月に行われる大学祭では「ニワトリ総選挙」を開催。「総選挙だけでなく、ニワトリについて楽しみながら知れる小冊子を学内で配ることが夢です」。好きこそ物の上手なれ。ニワトリ研究会の研究報告書に止まらない「ニワトリ情報」に注目です。[了]

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niwatori_yajirushi_09編集後記

「生物多様性を守る事」実は、取材前には少し他人事のように感じていました。しかし、取材で抱いたニワトリのふわふわ感やあたたかさにすっかりはまった今では、もし彼らがいなくなったら辛いです。「守る事」その入り口はまずもっと生き物について知って好きになる事。その知る機会を提供するニワトリ研究会は私達とニワトリを繋ぐ架け橋だと感じました。ニワトリ研究会の活躍、今後も応援します!
(取材・文/静岡大学人文社会科学部・寺島美夏)

【常葉大学ニワトリ研究会】
2010年設立、第34回天然記念物日本鶏品評会静岡大会では出品したミノヒキの「黄笹」という品種のニワトリで優秀鶏を受賞。部員数は12名、週に一度火曜日に定例会を行っている。主な活動は、観賞用のニワトリの飼育や記録。小学校などでの環境教育などを行う事もある。現在は日本種4種外国種4種、計21羽のニワトリを飼育している。
【大学祭でニワトリに会いに行こう!】
常葉大学富士キャンパス「エバーグリーン祭」
日時:11月5日(土)・6日(日)9:30〜

ニワトリ研究会では、生物実験室にて来場の方に最も人気のあるニワトリを決めるニワトリの祭典「ニワトリ総選挙」を行います。今年は昨年度まで二年連続1位のセブライトが殿堂入り!ニュースター誕生の予感、ぜひあなたの目でもっとも美しく、もっとも可愛いニワトリを選びにお越しください!
詳しくはこちら→http://evergreenfes.wixsite.com/evergreenfestival

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